もくじ
はじめに:PIPSは「値幅の共通言語」
PIPS(ピップス)は値動きの大きさを比較するための標準単位です。「今日は+50pips取れた」「スプレッドは0.8pips」など、通貨や価格水準に関係なく話を通じさせるために使います。ドルでも円でも、価格そのものではなく幅として扱えるのが最大の利点です。
PIPSの定義と桁数:pipとpipette
pipは「価格の標準的な最小単位」。多くの通貨ペアでは0.0001が1pipです。さらに細かい桁で表示するブローカーでは、pipette(ピペット)という1/10 pip単位(例:0.00001)も併用します。
- 非円ペア(EURUSD など):
1 pip = 0.0001
、1 pipette = 0.00001
- 円が「見積通貨」のペア(USDJPY など):
1 pip = 0.01
、1 pipette = 0.001
表示桁が5桁/3桁のブローカーは小数第5位/第3位まで刻む=pipette表示だと考えると理解が早いです。
通貨ペア別の最小単位:非円・円・例外
おおむね次のルールで覚えておけば実務上困りません。
- 非円ペア(EURUSD, GBPUSD, AUDUSD など):1pip = 0.0001
- 円建て(USDJPY, EURJPY など):1pip = 0.01
- 例外・CFD・仮想通貨:仕様がブローカーごとに違うため、取引仕様書(contract specification)で必ず確認。
1pipの金額の求め方(ロット別)
口座通貨がUSDの場合の代表例です。ロットは1.0 = 100,000通貨、0.1 = 10,000通貨、0.01 = 1,000通貨。
基本式(概念)
pip価値(口座通貨) ≒ (最小単位) × 取引数量(通貨) ÷ 為替レート(口座通貨/見積通貨の関係による)
暗記ショートカット
- EURUSD 1.0ロット:1pip ≒ $10(0.1ロット=$1、0.01ロット=$0.10)
- USDJPY 1.0ロット:1pip = ¥1,000(USD換算は
¥1,000 ÷ USDJPY
)
たとえばUSDJPY=150のとき、1.0ロットの1pipは ¥1,000 ≒ $6.67
。0.1ロットなら$0.667、0.01ロットなら$0.0667です。
スプレッド・手数料・スリッページをpipsで表す
コストはpipsで統一すると比較が楽です。
- スプレッド:例えばEURUSDの0.8pips。
- 手数料:片道$3/lot(往復$6)をpips換算する場合、EURUSDでは1pip=$10/lotなので0.6pips相当。
- スリッページ:-0.2pips など。
合計取引コスト(pips)= スプレッド + 手数料換算 + スリッページ。期待値計算の土台になります。
損切り幅とポジションサイズ:pipsで統一
資金管理は「1回の損失上限(%)」×「損切り幅(pips)」でロットが決まります。
ロット = (口座残高 × 許容損失率) ÷ (損切り幅[pips] × 1pip価値[口座通貨/lot])
例:口座$5,000、許容1%、EURUSDで損切り20pips、1pip=$10/lot → ロット = (5,000×0.01)/(20×10) = 0.025
lot。
早見表:主要ペアのpipサイズと概算価値
ペア種別 | 1pip | 1pip価値(1.0lot目安) | 補足 |
---|---|---|---|
EURUSDなど(非円) | 0.0001 | 約$10 | 口座通貨USD想定 |
USDJPYなど(円建) | 0.01 | 約¥1,000(≒$6.7@150) | USD換算はレートで割る |
GBPUSD | 0.0001 | 約$10 | ボラ高め、コスト要確認 |
クロス円(EURJPY等) | 0.01 | 約¥1,000 | 流動性・スプレッドはペア差 |
CFD/暗号資産 | 仕様次第 | 仕様書参照 | pipの定義が異なる場合あり |
具体例:EURUSD・USDJPY・クロス円
EURUSD:+35.6pipsの意味
1.0ロットで+35.6pips → およそ$356。0.1ロットなら$35.6。スプレッド0.8pipsと手数料0.6pipsがあれば、実質+34.2pips。
USDJPY:-18pipsの意味
1.0ロットで-18pips → ¥18,000(USD換算はレートで割る)。0.05ロットなら-¥900。
クロス円(例:EURJPY)
1pip=¥1,000/lotと覚えると早い。USD口座なら現行レートでUSDに換算します。
よくある質問(FAQ)
Q. 5桁表示で0.00012動いたら何pips?
A. 0.00012 = 1.2pips(小数第5位はpipette=1/10pip)。
Q. ブローカーが変わるとpipの定義も変わる?
A. FX主要通貨では同じ。ただしCFDや仮想通貨は異なることがあるため仕様書を確認。
Q. ゴールド(XAUUSD)は?
A. 取り扱い仕様が業者によって違うため、最小価格変動と契約サイズを必ずチェック。
ありがちな誤解と落とし穴
- 桁の読み違い:pipとpipetteの混同で損切りが10倍ズレる事故は定番。
- コストの未換算:手数料をpips換算せず期待値が水増しされがち。
- 口座通貨の勘違い:JPY口座/USD口座でpip価値が変わる。必ず換算する。
- 銘柄ごとの差異:CFD・暗号資産・貴金属は「pip」という表記がないことも。
実践ワークフロー:記録テンプレ
トレード記録はpipsで統一すると比較が簡単です。
日時 | ペア | 方向 | エントリ | 損切り幅(pips) | 利確幅(pips) | 結果(pips) | コメント |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2025-08-30 | EURUSD | Long | 1.0850 | 15 | 30 | +28.6 | ロンドン初動 |
このテーブルを日々埋めるだけで、勝ちパターンとコスト影響が見えてきます。
まとめ
PIPSは値幅の共通言語。非円=0.0001、円=0.01、pipette=1/10pipをまず暗記。1pip価値とコストのpips換算を押さえ、損切り幅とロットを一貫した基準で管理すれば、戦略の比較・改善がスムーズになります。