リスクリワード(RR)は「1回の負けへ備え、1回の勝ちでどれだけ取り返すか」を数値化する最重要の概念です。本稿は、RRの設計→ポジションサイズ→利確&損切→期待値(Expectancy)までを一気通貫で解説。読了後すぐ使えるチェックリストと表を用意しました。
もくじ
はじめに:なぜRRが最優先なのか
RRは勝率のブレを吸収します。仮に勝率が50%でも、RR=2.0(負け1に対して勝ち2)なら期待値はプラス。逆に勝率が高くてもRRが低すぎると、1回の大きな負けで帳消しになります。結論:エントリー前にRRが1.0未満のトレードは除外、1.5〜2.0以上を基本線にしましょう。
用語と基本式:RRと期待値の関係
- リスク(Risk):損切までの値幅(pips)×1pipsあたり金額。
- リワード(Reward):利確までの値幅×1pipsあたり金額。
- RR:Reward ÷ Risk(例:20pの利確/10pの損切=RR 2.0)。
- 期待値:E = 勝率×平均勝ち − (1−勝率)×平均負け。単位は「R」に統一すると管理しやすく、平均勝ち=+R、平均負け=−1Rとして扱います。
例:勝率45%、平均勝ち+2.2R、平均負け−1R → E = 0.45×2.2 − 0.55×1 = +0.435R。1回あたり平均0.435Rのプラスです。
損益分岐の早見表(勝率×RR)
下表は「そのRRで収支トントンに必要な勝率」の目安です。実戦ではスプレッド・手数料を上乗せして考えます。
RR | 損益分岐の勝率(概算) | コメント |
---|---|---|
0.7 | 約59% | 高勝率型でないと厳しい |
1.0 | 約50% | 勝率とRRのバランス型 |
1.5 | 約40% | 標準的に狙いやすい |
2.0 | 約33% | トレンドフォローの王道 |
3.0 | 約25% | 回転は落ちるが強力 |
損切の決め方:構造ベースで“価格に敬意”を払う
損切は「相場の構造が崩れる位置」に置きます。固定pipsよりも、直近スイング高安の外側・レジサポの外側・ボリンジャーやATRの外側など、価格が“否定”を示す場所へ。
- 直近スイング外側:Wボトムのネック下、ダブルトップのネック上など。
- ATR基準:ATR(14)×k(例:1.2〜1.5倍)を下駄にしてボラに追随。
- ラウンドナンバー外側:キリ番近辺は流動性が集まりやすい。偽抜けに注意。
利確の決め方:部分利確・トレーリングの使い分け
利確は段階化(分割利確)で柔らかく運用します。1回目:前回高安/対向バンド、2回目:フィボ拡張1.272〜1.618、残り:トレーリング(直近安値/高値、EMA20、パラボリック等)。
- 部分利確:最初の1R/1.5Rで半分利確→残りを伸ばす。
- 時間ストップ:想定時間内に走らない場合は撤退(セッション跨ぎのノイズ回避)。
ポジションサイズ:口座保全のための固定比率法
1回の損失を口座残高の0.5〜2.0%に固定するのが一般的です(初心者は0.5〜1%)。計算は次の通り:
ロット = 口座残高×許容リスク率 ÷(損切pips × 1pipsあたり金額)
残高 | 許容リスク | 損切pips | 1pips価値 | 推奨ロット(概算) |
---|---|---|---|---|
¥500,000 | 1% = ¥5,000 | 15p | ¥100/p | 約3.33万通貨 |
¥1,000,000 | 1% = ¥10,000 | 20p | ¥100/p | 約5万通貨 |
¥1,000,000 | 0.5% = ¥5,000 | 25p | ¥100/p | 約2万通貨 |
※実際のpips価値は銘柄・口座通貨で異なるため、ブローカー仕様で再計算してください。
時間帯・銘柄別のRR最適化の考え方
- ロンドン立ち上がり〜NY序盤:走りやすくRRを取りやすい。指標前後は除外。
- 東京後場〜欧州前:伸びが鈍い時間帯。ブレイク狙いは非効率、プルバック短期決済へ。
- XAUUSD:ボラ大。損切は構造+ATRで厚めに、サイズは控えめ。
- USDJPY:相対的に素直。RR1.5〜2.0のプルバック型が安定しやすい。
実戦プレイブック:3つの代表シナリオ
① プルバック型(RR 1.5〜2.0)
- 上位足上昇、SMA200上。押しはEMA20〜SMA75帯。
- 5mで小さなWボトム→ネック超えでIN、SLは押し安値下。
- TP1=1Rで半分、TP2=前回高値/対向+2σ、残りはトレーリング。
② ブレイク継続型(RR 2.0〜3.0)
- 1Hのスクイーズ後、バンド拡大+出来高増(代替:ティック増)。
- 明確なレンジ上限ブレイクでIN、SLはブレイク足の安値下。
- TP1=直近高値更新ゾーン、TP2=拡張1.272、伸びたら1.618へ。
③ 反転狙い(構造否定型、RR 2.0前後)
- 上位足でダブルトップ成立、ネック割れ。
- 戻りでネックにリテスト→5mで下方向合図(EMA5<20+直近安値割れ)。
- SL=戻り高値上、TP=対向−2σ→前回安値→拡張1.272。
検証・記録:期待値を“上げ続ける”運用
毎トレードで下記を記録し、週次で集計しましょう。
- 日時・銘柄・セッション・指標の有無
- エントリー/損切/利確の価格とpips、事前に想定したRR
- 実現RR、勝敗、コメント(良かった/悪かった点)
集計では、RR別の勝率・時間帯別の期待値・戦略別(プルバック/ブレイク/反転)の期待値を比較。悪い組み合わせは即時に停止し、良い組み合わせへ配分を増やします。
よくある誤解と失敗例
- 勝率至上主義:RR0.5で勝率70%でも、1回のオーバーラン負けで崩れます。
- “固定10p損切”病:ボラや構造を無視。価格が否定を示す位置まで許容すべき。
- 伸ばしすぎ/粘りすぎ:対向帯や拡張達成後は部分利確をルール化。
FAQ:よくある質問
Q. RRは毎回同じが良い?
A. ベースは1.5〜2.0、ブレイク継続局面のみ伸ばす、など戦略別に変えます。
Q. SLが深くてロットが小さくなる…?
A. それでOK。口座保全が最優先。サイズで合わせるのが固定比率法の思想です。
そのまま使えるRRチェックリスト&計算表
項目 | 合格条件 | 確認 |
---|---|---|
上位足方向 | 日足/4H/1Hのダウと整合 | ☐ |
損切位置 | 構造否定の外側(直近高安・ATR×k・ラウンド外) | ☐ |
利確計画 | TP1=対向帯 or 1R、TP2=拡張1.272〜1.618、残りトレール | ☐ |
事前RR | 最低1.0、推奨1.5〜2.0 | ☐ |
サイズ | 口座の0.5〜2.0%に収まる | ☐ |
時間帯/指標 | 指標30分前後は除外、セッション適合 | ☐ |
計算 | 式 | 例 |
---|---|---|
RR | 利確幅 ÷ 損切幅 | 20p ÷ 10p = 2.0 |
期待値(R) | 勝率×平均勝ち − (1−勝率)×平均負け | 0.45×2.2 − 0.55×1 = +0.435R |
ロット | 残高×リスク率 ÷ (損切p × pips価値) | 100万円×1% ÷ (20p×¥100) = 0.5万通貨 |
半自動化のヒント:アラート&EA化
- アラート条件:エントリー候補が出たら、予定RR(TP/SL)を自動計算して表示。
- ログ保存:想定RR・実現RR・勝敗・手数料をCSVへ。週次で期待値を再評価。
- フィルター:上位足方向と逆・指標前後・RR<1.0は通知しない。
まとめ
RR→サイズ→利確/損切→期待値の順で一貫管理すると、勝率の揺れに耐える強い運用が可能です。まずはRR1.5〜2.0を土台に、時間帯・銘柄・戦略ごとの期待値を記録し、良い組み合わせへリソースを集中させましょう。