「ロスカット」は、損失を限定して次のチャンスに資金を残すための安全装置です。
価格が思惑に反して進んだとき、自分の手で損失を止めるための裁量ロスカットと、
証拠金が不足したときに起こる強制ロスカット(証拠金維持率による強制決済)の2つを区別して理解しましょう。
もくじ
1. ロスカットの定義と種類
裁量ロスカット:自ら設定した損失上限に達したら、手動または逆指値(ストップ)で決済する行為。
強制ロスカット:口座全体の証拠金維持率が規定を下回ると、業者ルールに従って自動的に建玉が決済されること。
- 裁量ロスカット=戦略の一部(計画的)
- 強制ロスカット=最後の安全弁(計画外)
2. なぜ基準を先に決めるのか
エントリー後に基準を考えると、感情が判断をゆがめます。入る前に、どこで無効化かを決めましょう。
無効化ラインとは「この価格になったら、根拠が壊れたと認める」線です。
3. 基準の作り方:価格・ボラ・時間
| 基準 | 特徴 | 目安 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 価格(pips固定) | シンプルで明快 | 直近スイング外+α | 相場のボラ変化に弱い |
| ボラ(ATR/σ連動) | 市況に適応 | SL=1.0〜1.8×ATR | ATR期間と市場時間に依存 |
| 時間(タイムアウト) | 伸びないリスクに対応 | 戦略時間軸の3〜5本 | 値幅根拠と併用が前提 |
多くの戦略では、価格×ボラ×時間のハイブリッドを使います。
4. 置き場所:無効化ラインと構造
ストップは「テクニカル根拠が消える場所」に置きます。
- ロング:直近押し安値の外側(例:押し安値−1.0×ATR)
- ショート:直近戻り高値の外側(例:戻り高値+1.0×ATR)
- レンジ:レンジ外+0.5×ATR(ダマシ回避)
「当たってから戻る」のが常。ほんの少し奥に置くのがコツです。
5. 証拠金維持率と強制ロスカット
維持率=有効証拠金 ÷ 必要証拠金 × 100%。各社の強制ロスカット水準(例:100%/50%など)は異なります。
維持率が閾値を割ると、保有建玉が自動決済されます。裁量より悪い価格で執行されがちなので、
強制ロスカットに頼らない設計が鉄則です。
6. スリッページとギャップ対策
- 指標・要人発言・週明けはギャップ(窓)が出やすい
- 逆指値は約定を保証しません。指値ストップではなく成行型ストップを理解
- イベント前はポジション縮小、ロット分散でギャップ被害を平均化
- ロールオーバー時のスプレッド拡大に注意(早朝・水曜3倍日など)
7. ロットと許容損失の計算
まず損失額の上限(1トレードのリスク)を決め、そこからロットを逆算します。
ロット = (口座残高 × リスク%) ÷ (損切幅[pips] × 1pipsの価値)
例:口座100万円、リスク1%、損切幅50pips、1pips=100円 → 2ロット。
| 項目 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 1トレードのリスク | 口座の0.5〜1.5% | 成熟口座ほど低く |
| 日次ドローダウン制限 | 2〜4% | 超えたら取引停止 |
| 週次ドローダウン制限 | 4〜8% | 回復プランを用意 |
8. 通貨ペア別の目安(ボラ想定)
| 通貨ペア | 日中平均レンジ | ストップの例 | メモ |
|---|---|---|---|
| USD/JPY | 60〜120pips | 1.2×ATR(14) または 80〜120pips | 流動性高く滑りは比較的小 |
| EUR/USD | 70〜130pips | 1.2×ATR(14) | 指標前は広め |
| GBP/JPY | 120〜200pips | 1.5×ATR(14) | ボラ大、分割前提 |
| XAU/USD | 15〜35ドル | 1.5×ATR(14) | ロール時の急拡大に注意 |
9. 運用ルール:執行・ログ・見直し
- 執行:逆指値を必ず置く。イベント時は手動監視と併用。
- ログ:事実・判断・行動・学びの4行メモ。
- 見直し:月次でRR(リスクリワード)、SL到達率、スリッページ実績を棚卸し。
10. よくある質問
- Q. 「損切りしない」戦略はダメ?
- A. 最終的に強制ロスカットへ収束しやすく、口座破綻の主因です。
- Q. 同じストップ幅で良い?
- A. 市況によりATRが変わるので、ボラ連動が安全です。
- Q. 建値ストップはいつ?
- A. RR1:1達成や直近スイング更新時など、条件を先に決めること。
11. まとめ
ロスカットは「負け」ではなく、生存戦略です。
価格・ボラ・時間の三位一体で基準を設計し、維持率と執行リスク(ギャップ/スリッページ)を織り込んで運用しましょう。
ルールに従って損失を限定できる人だけが、次のチャンスに資金を残せます。
