【トレンド追従】FX記事:トレンドが出た時に乗るための準備
もくじ
イントロダクション
トレンドは“動いている方向に賭ける”最もシンプルな戦い方です。問題は、動き出してから慌てると飛び乗りになり、損切りも利確も雑になりがちなこと。
そこでこの記事では、事前準備→初動エントリー→管理→イグジットを一気通貫で設計し、トレンドが出た瞬間に“迷わず淡々”と乗れる仕組みを作ります。
使う道具は、移動平均線(EMA/SMA)、ダウ理論、出来高(任意)、ATR(平均的なボラの尺度)。指標やニュースはアラート扱いにします。
トレンドを見極める3条件
【3条件】次の3つが同時に満たされれば“トレンドが出ている/出そう”と判定します。
- HHHL/LLLH(高値・安値の更新)…上昇なら高値・安値とも切り上げ。下降なら切り下げ。
- 移動平均の傾きと並び…5EMAが20EMAの上(下)、かつ75SMAが追随、角度がついている。
- ATRの拡大…直近14期間ATRが基準値を上回り、レンジの“窮屈さ”から解放されている。
上記は“ルール化”しやすく、チャートソフトでも自動チェックが可能です。
// TradingView(Pine-like擬似): 上昇トレンド判定
isUp = high > high[1] and low > low[1] and ema(close,5) > ema(close,20) and sma(close,75) < close and ta.atr(14) > sma(ta.atr(14),100)
alertcondition(isUp, title="UpTrend", message="上昇トレンド条件を満たしました")
出現前にやる準備チェックリスト
トレンドが出る前に、次のチェックを終わらせておきます。
- 監視銘柄リスト:主要通貨+得意銘柄(例:USDJPY, XAUUSD, NAS100cash)に絞る。
- 時間軸の優先順位:上位足で方向確認→下位足でタイミング(例:4H→1H→5m)。
- アラート設定:MAクロス、直近高値/安値のブレイク、ATR閾値超え。
- 経済指標カレンダー:発表直後のスリッページ/拡張スプレッドを想定してロットを抑える。
- 資金管理ルール:1トレードの最大リスク1%(初心者は0.5%)を上限に固定。
道具は“先に置く”。発生してから探すと雑になります。
発生直後のエントリー設計
エントリーは“どこで買う/売るか”より“どこで間違いを認めるか”で設計します。
戦略 | トリガー | 長所 | 短所 | 適性 | ノート |
---|---|---|---|---|---|
ブレイクアウト | 直近高値/安値+数pipsを成行/逆指で突破 | 初動を逃しにくい | ダマシに弱い | 強いトレンド/ニュース直後 | 必ず失敗前提で再突入設計 |
押し目買い/戻り売り | 5EMA/20EMA・前回高安・フィボ38.2~61.8での反発 | リスクリワードが整いやすい | 置いていかれる | トレンド持続局面 | EMAの角度が鈍れば見送り |
継続パターン | フラッグ/ペナントの上抜け/下抜け | 根拠が複合化できる | 形が崩れると遅れる | 波の中盤〜後半 | 出来高やATRで絞り込み |
実装例(5分足、上位足4H上昇確認済み):
// 例:上昇トレンドでの押し目買い
entry_price = request.security(syminfo.tickerid, "5", ta.valuewhen(ta.crossover(ema(close,5), ema(close,20)), close, 0))
sl = low[1] - ta.atr(14) * 1.2 // “間違いを認める”価格
tp1 = entry_price + (entry_price - sl) * 1.2
tp2 = entry_price + (entry_price - sl) * 2.0 // 伸びる日は引っ張る
“押し目を待つ間に置いていかれた”問題は、ブレイク用の少量ポジ+押し目用の本命ポジの二段構えで解決します。
リスク管理とサイズ設計
ポジションサイズは固定小数ではなくリスク一定で統一します。
// ロット= 口座残高 × リスク% ÷ (エントリーとSLの距離)
risk_percent = 0.005 // 0.5%
stop_pips = abs(entry - sl)
lot = account_balance * risk_percent / (stop_pips * pip_value)
ATRで“平均的な揺れ”を測り、SL幅が小さすぎるときは入らない選択を。ニュース直後はスプレッド拡大のため、想定損失>許容損失となりやすい点に注意。
ポジション管理(追撃・分割・トレーリング)
管理の原則は「伸ばすときは触らない、崩れたら速い」。
- 建値ストップ:含み益が1R到達で一部利確+建値へ。
- トレーリング:ATR×nで“価格に追随する土台”を決める(例:ATR(14)×1.5)。
- 追撃:高値更新フラッグのブレイクで少量を追加。ただし合計リスクは初期Rの1.5倍以内。
// ATRトレーリング(概念)
trail = ta.atr(14) * 1.5
long_sl := math.max(long_sl, close - trail)
イグジット設計(利益確定と撤退)
利確は“一撃必中”ではなく分割が基本。
- TP1:1.2Rで30~50%カットし、残りは伸ばす。
- TP2:2R〜3Rの目安。日足の抵抗帯・前回高値/安値・ラウンドナンバーで調整。
- 全撤退:トレンド判定の3条件が崩れたとき、または急拡大ボラで足型が壊れたとき。
“勝ちを守る”より“次も同じルールで入れる”ことを優先—これが再現性です。
検証と再現性を高める方法
検証は以下の順で行うと効率的です。
- 紙ルール→過去チャートで手検証(20〜30事例)。
- 半自動:アラートで候補抽出→手動エントリー。
- 自動ログ化:エントリー理由/時間/SL/TP/ATR/MA角度をCSV出力し、勝てた理由/負けた理由をデータで把握。
ログ項目例:
timestamp, symbol, timeframe, setup, entry, sl, tp1, tp2, atr14, ema5_slope, ema20_slope, result_R
“いい感じ”は捨て、条件→結果の対応でルールを磨きます。
よくある失敗と回避策
誰もが通る落とし穴:
- 条件が多すぎる(出番が来ない)→ まずは3条件に圧縮。
- 初動でフルサイズ(メンタル崩壊)→ 少量+本命の二段構えへ。
- SLが近すぎる(ノイズで刈られる)→ ATR基準で“平均の揺れ”を尊重。
- 指標直後のスプレッド拡大を無視→ 想定損失を再計算、ロットを自動減衰。
FAQ
Q. どの時間足が最適?
上位足で方向、下位足でタイミング。4H→1H→5分がバランス良。
Q. インジは何本必要?
5EMA/20EMA/75SMAとATRで十分。余計な線は迷いを増やすだけ。
Q. 逆張りは?
この記事では扱いません。トレンドが“終わった根拠”を作れないうちは触れないのが安全。
まとめ
要点の再掲:
- 判定は「HHHL/LLLH・移動平均の傾きと並び・ATR拡大」の3点セット。
- エントリーは“間違いを認める場所(SL)”から逆算。二段構えで置いていかれ対策。
- 管理は“伸ばすとき静、崩れたら速”。分割利確とATRトレールで再現性を担保。
最後は“準備した人”が乗れます。ルールを小さく、次も回せる形に。
付録:実装Tips集
- TradingViewのアラートは『条件成立→音+プッシュ通知→URLウェブフックでMT5へ』が自動化の王道。
- MT5では独自インジで『HHHL/LLLH』『MA角度』を数値化し、ログ出力しておくと検証が一気に楽になる。
- ボラ急拡大日は“勝ちを大きく、負けを小さく”に寄せられる。利確を遅らせる代わりに建値保全を早めると良い。
- レンジ気味なら、ブレイク専用の最小ロットだけ稼働し、押し目/戻りは見送る—“参加はするが、主役にならない”。
- 週初は方向が定まらないことが多い。4H/日足のMA角度が立つまでは『待つ』も優位性。
ケーススタディ:実際の相場での判断と行動
ケース1:USDJPY 上昇トレンドへの初動参加
4時間足で75SMAが右肩上がり、1時間足で5EMAが20EMAを上抜け。直近高値のブレイクに小ロットで参加し、押し目(20EMAタッチ+前回高値の役割反転)で本命を追加。SLは“押し目の起点-ATR×1.2”。TP1で建値保全、TP2は日足抵抗で分割利確。結果は2.6R。
ケース2:XAUUSD(GOLD)急騰直後の見送り判断
雇用統計直後にATRが急拡大。5分足では伸び続けているが、スプレッドも拡大、上位足では日足レジに接近。本記事のルールにより「最小参加のみ/本命は見送り」と判断。飛び乗りの衝動より、再現性を優先。
ケース3:NASDAQ100 継続パターンのブレイク
1時間足で旗(フラッグ)形成。出来高の収縮後、上抜け。ブレイクで1/3、押し戻しで2/3を追加。ATRトレーリングで引っ張り、3R達成。途中の小さな押し目ノイズでは“触らない”を徹底。
用語集(かんたん解説)
- HHHL/LLLH:高値・安値の切り上げ/切り下げの並び。トレンドの基礎文法。
- ATR:Average True Range。相場の“息づかい(平均的な揺れ)”。SLやトレールの基準に使う。
- R:リスク1単位。エントリー価格と損切りの距離を1とする利確の尺度。
- フラッグ/ペナント:継続パターン。大きく進んだ後の休憩で、ブレイク方向に再開しやすい。
- 角度:MAの傾き。価格の“勢い”をシンプルに表す。横ばいは原則見送り。
1日の運用ルーティン(テンプレ)
- 上位足(4H/日足)で方向性を確認し、逆向きのセットアップは捨てる。
- 監視リストの直近高安にアラートを置き、MAクロスとATR閾値もセット。
- 発生:まずは最小ロットで参加。押し目/戻りで本命を追加。
- 管理:1.2Rで分割→建値保全。以後はATRトレールを機械的に。
- 記録:根拠・感情・結果をログ。翌日“条件→結果”で振り返る。
完全ルール(印刷OK)
- 【判定】HHHL/LLLH+5/20/75の並び+ATR拡大。
- 【時間足】4Hで方向、1Hでセットアップ、5mでトリガー。
- 【サイズ】1トレードの最大損失は口座の0.5〜1.0%。
- 【初動】ブレイクはリスクの1/3、押し目/戻りで残り2/3。
- 【損切】直近スイング反転水準 −/+ ATR×1.2。
- 【利確】1.2Rで分割+建値。最終は2R〜3R、もしくはトレール割れ。
- 【禁止】横ばいMA、指標直後のフルサイズ、感情でのナンピン。
- 【記録】最低10項目(時刻/銘柄/時間軸/セットアップ/ENTRY/SL/TP/ATR/MA角度/結果R)。