「FXで利益が出たら税金はどうなるの?」――最初にぶつかる疑問ですよね。本記事では、国内FXと海外FXでの課税の違い、確定申告が必要になる条件、必要書類・経費・申告手順まで、初心者にもやさしくまとめました。まずは全体像をつかみ、迷いなく準備できるようにしましょう。
もくじ
1.はじめに:FXの税金の考え方(全体像)
FXの税金は、どの業者/どの市場で取引したかで大きく変わります。国内業者の店頭FXや取引所FX(くりっく365)は、「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税(税率一律)。一方、一般に海外FXは雑所得(総合課税)として累進税率が適用されるのが原則です。
また、確定申告が必要かどうかは「利益の額」「給与の有無」「他の所得の有無」などで変わります。まずは国内/海外の違いを押さえましょう。
2.国内FXと海外FXで何が違う?(税区分・税率)
2-1.国内FX(店頭FX/くりっく365)
- 税区分:先物取引に係る雑所得等(申告分離課税)
- 税率:原則一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)
- 損益通算:同区分(先物・オプション等)同士で可
- 損失の繰越控除:確定申告を行えば最長3年まで可能
2-2.海外FX
- 税区分:原則として雑所得(総合課税)
- 税率:他の所得と合算した課税所得に累進税率(住民税を含めると最大水準が高くなりがち)
- 損益通算:原則、国内の申告分離課税の損益とは通算不可
- 損失の繰越控除:原則、不可
ワンポイント:海外FXでも商品性や法令上の扱いが特殊な場合は税務上の取扱いが異なる可能性があります。不明な場合は必ず税務署や税理士に確認しましょう。
3.確定申告が必要なケース/不要なケース
3-1.原則
- 国内FX(申告分離):利益があれば原則申告(通算や繰越のためにも申告が基本)
- 海外FX(総合課税):利益があれば原則申告(他所得と合算)
3-2.給与所得者の「20万円ルール」
年末調整済みの給与所得者で、給与以外の所得(雑所得など)の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告が不要になる場合があります(例外あり)。ただし、住民税の申告は必要になるケースが多い点に注意してください。
3-3.申告時期の目安
- 対象期間:毎年1/1〜12/31
- 申告時期:毎年2月中旬〜3月中旬(年度により前後)
4.税額のかんたん計算例と比較表
ここではイメージ重視で、経費や各種控除を考慮しないざっくり試算を示します。
ケース | 区分 | 前提 | 概算税額 | メモ |
---|---|---|---|---|
国内FX利益30万円 | 申告分離 | 経費・控除なし | 約60,945円(20.315%) | 一律税率でシンプル |
国内FX利益120万円 | 申告分離 | 経費・控除なし | 約243,780円(20.315%) | 損失繰越を使うと圧縮可 |
海外FX利益30万円 | 総合課税 | 給与あり・他所得と合算 | 累進税率により変動 | 所得階層により税率が上下 |
海外FX利益120万円 | 総合課税 | 給与あり・他所得と合算 | 累進税率により大きく変動 | 課税所得帯に要注意 |
※上表は目安であり、実際は基礎控除・社会保険料控除・扶養控除・経費等を考慮して計算します。
5.必要経費になるもの・ならないもの
5-1.必要経費になりやすい例
- 取引プラットフォーム関連:VPS代、専用回線費、通信費
- 情報・学習:専門書籍、オンライン講座、セミナー費
- 機器:PC・モニター等の減価償却費(耐用年数・按分に注意)
- ツール:有料インジケーター、検証ソフト、サブスク
- 雑費:プリンタ用紙、文具(業務関連性が明確な範囲)
5-2.注意点
- 私的利用分は按分(例:PCを仕事7:私用3なら70%を経費化の目安)
- 領収書・請求書・クレカ明細・利用明細は必ず保存
- 海外サービスの領収書も保管(通貨換算の根拠を残す)
6.準備する書類とデータの集め方
- 年間取引報告書/年間損益報告書(国内業者)
- 取引履歴(CSV):約定履歴・スワップ・手数料の記録
- 海外FXの口座明細:損益・出金・入金の履歴
- 経費の証憑:領収書・明細・契約書・請求書等
- 本人確認:マイナンバーカード/通知カード+本人確認書類
7.e-Taxでの申告フロー(はじめてでもOK)
- 事前準備:マイナンバーカードとカードリーダー、またはスマホ連携を準備。利用者識別番号を取得。
- 損益集計:年間損益を確定。国内FXは申告分離の「先物取引に係る雑所得等」欄、海外FXは雑所得(総合課税)欄に入力。
- 経費入力:按分・減価償却に注意して入力。根拠書類は保存。
- 住民税の確認:給与特別徴収/普通徴収の指定に注意(副業の開示可否に関わる)。
- 送信・納付:e-Taxで送信、納付は振替納税・ダイレクト納付・クレジットカード等。
8.よくある3つのケーススタディ
ケースA:国内FXで年間+15万円、会社員
20万円ルールの範囲内なら所得税の確定申告が不要になる場合あり。ただし住民税の申告が必要なことが多いので自治体に確認。
ケースB:国内FXで年間+80万円、兼業トレーダー
確定申告必須。同区分の損益通算、翌年以降の損失繰越を使えるため、継続的に申告する方が有利。
ケースC:海外FXで年間+40万円、会社員
総合課税なので他の所得と合算。課税所得帯により税率が変わる。経費の妥当性と住民税の扱いに注意。
9.よくある質問(FAQ)
Q1.スワップポイントはいつ課税?
一般に受取時・確定時点で課税関係が生じます。受取・支払ともに履歴を保存し合算しましょう。
Q2.国内FXと海外FXの損益は通算できる?
原則不可。国内の申告分離(先物取引に係る雑所得等)と、海外FXの総合課税(雑所得)は区分が異なるためです。
Q3.副業が会社にバレたくない…?
住民税の徴収方法(普通徴収)を選ぶ等の方法がありますが、確実に秘匿できる保証はありません。就業規則も確認を。
Q4.損失が出た年も申告すべき?
国内FXなら、損失繰越(最長3年)を活かすため申告が有利。海外FXは繰越できないのが一般的です。
Q5.申告しないとどうなる?
無申告加算税・延滞税などのペナルティ対象になり得ます。早めの相談・修正申告が安心です。
重要:税制は変わり得ます。最終判断は必ず国税庁・税務署・税理士等の最新情報で確認してください。
10.まとめ
- 国内FX:申告分離課税(20.315%)。通算・3年繰越可。
- 海外FX:総合課税。累進税率で、通算・繰越は原則不可。
- 20万円ルール:所得税は不要になる場合ありでも、住民税の申告が必要なことが多い。
- 経費・証憑をしっかり管理。e-Taxでスムーズに。
- 不明点は必ず確認。最新制度と個別事情で結論が変わります。