【経済指標解説】FX記事:雇用統計の発表タイミングと戦略

雇用統計の発表タイミングと戦略.

【経済指標解説】FX記事:雇用統計の発表タイミングと戦略

イントロダクション

雇用統計(NFP:非農業部門雇用者数)は、毎月第1金曜(例外あり)に公表される米国の重要指標です。

値幅は魅力的ですが、スプレッド拡大・約定滑り・一方向フェイクという“罠”も同時に現れます。

この記事では、発表前→直後→1〜5分→5〜30分→数時間のフェーズ別に、やること/やらないことを具体化し、損小利大よりも資金保全を最優先に設計します。

雇用統計の基礎(いつ/何が動く?)

雇用統計の主な指標:NFP増減、失業率、平均時給。ドルストレート、金(XAUUSD)、株指数(NASDAQ100)などが大きく動きます。

  • 発表時刻:米東部時間8:30AM(サマー/ウィンターでJSTは変動)。国内では21:30/22:30が多い。
  • 最初の1〜2ティックでスプレッドが数倍に拡大。成行だと大きく滑る可能性。
  • 初動は統計サプライズ方向に走るが、数分で巻き戻す“フェイク”も頻出。

ゆえに、最初の1分を捨てるという発想は、長く生きるための王道です。

発表前の準備(ポジション/注文/アラート)

発表前に“置くもの”と“外すもの”を明確に。

  • ポジション:基本は軽量化。持ち越す場合はストップを広げず、サイズで調整。
  • 注文:待ち伏せの逆指は、スプレッド拡大で不利約定になりやすい。成行前提+最小参加を基本に。
  • アラート:直近高安、上位足の節、ATR閾値、ニュース時刻。
  • 可視化:チェックリストを画面に常駐(方向→セットアップ→サイズ→SL→TP→記録)。
チェックリスト(雇用統計・短縮版):
[方向] 上位足の構造/MA角度/ATR拡大
[準備] 直近高安・日足帯・ラウンド番号にライン
[リスク] リスク% ___  スプレッド閾値 ___  約定滑り許容 ___
[実行] 最小参加 or 見送り / OCO設定 / 通知ON
[記録] before/afterスクショ + CSVログ

直後0〜60秒:取らない勇気と最小参加

直後0〜60秒は“相場が最も危険で魅力的”な瞬間。ここをスルーできるかが腕の見せ所です。

  • 原則見送り:スプレッドが平常化するまで。
  • 最小参加の例外:初動ブレイクに極小サイズで触れる(建値保全を最優先)。
  • 禁止事項:フルロット・ナンピン・成行連打。

1〜5分:方向仮決めとフェイク回避

1〜5分は“方向の仮決め”をする時間帯。フェイク回避のための条件を。

  • 初動の半値戻し/押しの確認。半値を超えて戻すなら初動の否定を疑う。
  • 下位足で小フラッグ/ペナントを形成したら、ブレイク方向で少量参加。
  • ATR拡大が続くかを確認。急縮小は“瞬間芸”の可能性。
// Pine-like擬似:半値判定と簡易トリガー
half = (high[0] + low[0]) / 2
isFakeUp = close < half and high[0] - low[0] > ta.sma(tr, 50)
triggerLong = ta.breakout(close, high[1]) and ta.atr(14) > ta.sma(ta.atr(14),100)

5〜30分:押し目買い・戻り売りの再構築

5〜30分は“押し目買い/戻り売り”の王道タイム。初動ブレイクに飛び乗らずとも、構造を待てば好機は来ます。

  • 20EMAや前回高安の役割反転で反発を確認。
  • 1.2Rで分割利確+建値保全、ATR×1.5でトレール。
  • 出来高/ティックが極端に細るなら、レンジ化リスクにつき見送りも選択。

30分〜数時間:トレンド追随と逆風条件

30分〜数時間は“本命の波”。発表内容がトレンドの継続/転換に繋がるなら、ここからが伸ばす時間です。

  • 上位足(1H/4H)のMA角度を重視。横ばい化したら深追いしない。
  • 追撃は小フラッグのブレイクのみ。合計リスクは初期Rの1.5倍以内。
  • 日足の帯(抵抗/支持)に接近したら、分割利確を優先。

リスク管理:スプレッド/滑り/ギャップ耐性

雇用統計のリスクは“広がる・滑る・飛ぶ”です。

  • 広がる(スプレッド):スプレッド閾値を事前に設定し、超えたら見送り/最小参加のみ。
  • 滑る(スリッページ):成行は滑る前提。ロットはリスク一定式で自動縮小。
  • 飛ぶ(ギャップ):ストップ位置に届かず悪化決済の可能性。口座の1トレード損失は0.5〜1.0%に固定。
// ロット= 口座残高 × リスク% ÷ (SL距離)
risk_percent = 0.005  # 0.5%
stop_pips = abs(entry - sl)
lot = account_balance * risk_percent / (stop_pips * pip_value)

戦術比較表:どれをいつ使う?

フェーズごとの“何を使うか”早見表です。

戦術 適用タイミング 長所 短所 適性条件 ノート
完全見送り 直後0〜60秒 口座を守る/事故ゼロ 機会損失 スプレッドが異常/方向不明 最優先で検討
最小ブレイク参加 直後0〜60秒 初動を拾う 滑り/フェイク直撃 強いサプライズ 建値保全最優先
押し目買い/戻り売り 5〜30分 RR良/再現性高 置いていかれる 構造が見えた後 王道
継続パターン追随 30分〜数時間 大きく伸ばせる 途中合図が曖昧 フラッグ/ペナント確認 追撃は小ロット

ケーススタディ(USDJPY・XAUUSD・NASDAQ100)

ケース1:USDJPY — サプライズ上振れ

  • 初動で急騰→1〜5分で半値押し→20EMA反発で少量ロング。
  • TP1(1.2R)で建値保全、日足前回高値で部分利確。

ケース2:XAUUSD(GOLD) — 逆方向フェイク

  • 初動下落→1分で全戻し→5〜15分で旗形成→上抜けでエントリー。
  • “最初の1分を捨てる”ルールが奏功。

ケース3:NASDAQ100 — トレンド継続

  • 発表内容が既存のトレンドを後押し。30分以降の継続パターンで追撃。
  • ATRトレールで引っ張り、3R到達。

よくある失敗と対策

よくある失敗:

  • 直後にフルサイズで突撃→滑って即退場。
  • スプレッド閾値を確認せず、ブレイク指値が悪化約定。
  • 連続のフェイクに感情的に追い回してドローダウン。

対策:最小参加・建値保全・指標直後の見送りの3点を“機械化”する。

FAQ

Q. どの銘柄が狙いやすい?
USDJPYなどスプレッドが狭い銘柄。XAUUSDはサイズを落として扱う。

Q. 何分待てば良い?
“スプレッドが平常化+小さな構造が見えたら”。時間でなく条件で判断。

Q. 自動売買は有効?
直後の滑りリスクが大きく、裁量の停止ルールと併用するのが現実的。

まとめ

まとめ:

  • 雇用統計は“取る”より“壊さない”が先。最初の1分は捨てても良い。
  • 5〜30分の押し目/戻りで十分戦える。RRは分割+トレールで伸ばす。
  • サイズはリスク一定。スプレッド・滑り・ギャップを“仕様”として前提化。

“強い日も、弱い日も、まずは守る”。これが長く続けるための最短距離です。

付録:運用テンプレ

  • T-60分:方向確認とライン整理
  • T-10分:保有軽量化とサイズ上限確認
  • T+0分:見送り/最小参加、スプレッド監視
  • T+5〜15分:半値/フラッグ確認→小ロット
  • T+60分:日足帯→分割/縮小、ログ記録