もくじ
はじめに:損切りと利確は「戦術」より先に決める
多くの初心者はエントリー根拠に意識が向きがちですが、損切り(SL)と利確(TP)を先に決めるだけで成績が安定します。理由はシンプルで、損失の上限を先に固定し、勝ちを取りこぼさないための出口を言語化できるからです。
- 損切りは破産確率を下げる資金保全ツール
- 利確は勝ちをキャッシュ化する収益化ツール
- 両者が揃って初めて「期待値」が安定します
基本用語の整理(R・RR・期待値)
Rは1回のトレードにおける想定損失額(またはpips)を1単位とした尺度。RR(リスクリワード)は「利益幅 ÷ 損失幅」。期待値(EV)は一般に 勝率 × 平均利益 − 敗率 × 平均損失
で表せます。例えば、勝率40%、RR=2.0ならEVはプラスになり得ます。
ルール設計の全体像(3ステップ)
- 時間軸の選択:1分・5分・15分・1時間など。
スキャル=ノイズ多/頻度高、スイング=ノイズ少/頻度低。 - 損切りの基準化:固定pips、ATR、直近高安の外、時間切りなど。
- 利確の基準化:固定RR、部分利確+建値移動、トレーリング、時間切り。
ポイントは再現性。誰がやっても同じ結果になるよう、テキスト化・数値化します。
王道5パターン:損切り&利確の具体例
1)固定幅(例:SL15pips / TP30pips)
最もシンプル。RR=2を維持しやすく、検証も容易。ボラが急変するとフィット感が落ちる点に注意。
2)ATR連動(例:SL=1.2×ATR(14), TP=2.4×ATR)
ボラティリティに自動追随。相場環境の変化に強い反面、期間設定に依存。移動平均+ATRの併用が無難です。
3)直近高安の外側(スイング寄り)
プライスアクション重視。損切りは直近戻り高値/押し安値の外、利確は次のレジサポ or フィボ拡張。ダマシに注意。
4)時間切り(セッション/指標跨ぎ回避)
N分/時間で問答無用にクローズ。ニュース前に流動性が低い時間帯で有効。利幅は限定的になりがち。
5)部分利確+建値移動(BE)
一部をRR=1で利確→残りをトレーリング。ドローダウンの体感を和らげるのに有効。ただし最適化しすぎに注意。
資金管理とロット計算:口座1%リスクの実践
口座残高の1%を1Rとし、損切り幅からロットを逆算します。
計算式(例):
ロット =(口座残高 × 0.01)÷(損切り幅[円換算])
例:口座100,000円、想定損切り幅2,000円なら1回の損失は最大1,000円(1%)に設定すると、連敗時の資金耐性が上がります。固定割合法(Fixed Fractional)でドローダウンに耐える設計が基本。
入口と出口の一貫性:優位性の測り方
- シグナルA(例:MAクロス+BBバンドウォーク)で平均勝ち幅/負け幅と勝率を計測
- 出口X(固定RR)と出口Y(部分利確+BE)をAに対して比較
- 出口だけ変えるABテストで最適化しすぎを回避
実装チェックリスト(MT5/TradingView)
- エントリー時に必ず同時にSL/TP設定(OCO)
- アラート文面に銘柄/方向/SL/TP/RRを含める
- EA/スクリプト:
SL=ATR×倍率
やSL=直近高安±オフセット
をパラメータ化 - ジャーナルに「理由/感情/改善点」を1行で記録
初心者のつまずきポイントと対策
- 損切りの先送り:SLは最初に置く/動かさない。例外ルールを事前に文章化。
- 利確の早すぎ:トレーリング or 部分利確で残す仕組みを用意。
- ロット過大:1%を超えると破産確率が急増。固定割合法を徹底。
スキャル・デイトレ・スイング別の設定例
スタイル | 損切り | 利確 | 目安RR |
---|---|---|---|
スキャル(1–5分) | 固定8–15pips or ATR×1.0 | 固定RR=1.5–2.0 | 1.5–2.0 |
デイトレ(15–60分) | 直近高安の外 / ATR×1.2 | 次のレジサポ or RR=2–3 | 2–3 |
スイング(4H–日足) | 日足直近安値/高値の外 | 重要水平線 or フィボ拡張 | 2–4 |
検証方法:バックテスト~フォワード
- 手動バックテスト:過去チャートで100件以上のサンプルを集め、勝率・平均R・最大連敗を記録
- フォワード:同ルールをリアルタイムで30–50件テスト。差が大きければ過剰最適化の疑い。
- 見直し頻度:月1回。変更は1つだけ、効果検証後に採用。
メンタル&運用:ルールを守る仕組み化
人は迷うと損切りを遅らせ、利確を早めます。事前の自動化(OCO・トレーリング)と文字での宣言(チェックリスト化)でミスを減らしましょう。
まとめ
- 損切りは口座を守る盾、利確は利益を確定する剣。
- 固定幅・ATR・直近高安・時間切り・部分利確を理解し、自分の時間軸に合わせて1つずつ検証。
- 1%リスク×固定割合法でロットを決め、OCOで実行を標準化。
- 月1回の見直しで過剰最適化を回避しながら更新。