もくじ
なぜ比較するのか:判断の場所と再現性
裁量と自動売買の差は、誰が・どこで・いつ判断するかに尽きます。裁量は人間の目と脳がリアルタイムに環境を解釈し、自動売買はコードが過去定義されたロジックで機械的に実行します。前者は柔軟、後者は再現性と拡張性に優れます。
裁量トレードの強み・弱み
| 観点 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| 状況適応 | ニュース、地合い、板感など非定量情報に強い | ブレや感情に影響されやすい |
| スピード | 初見のパターンに対する瞬発力 | 24h継続や同時多通貨は困難 |
| 再現性 | 熟練により裁量ルールが洗練される | 言語化が甘いと再現性が崩壊 |
| コスト | 初期投資は低め | 時間・集中力の消耗が大きい |
裁量の鍵は儀式化。上位→中位→下位の手順、IF/THENの分岐、撤退基準を文章で固定化します。
自動売買(EA)の強み・弱み
| 観点 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| 再現性 | 条件を満たせば同じ判断を無限に繰り返す | 未知のレジーム変化に弱い |
| 同時性 | 多通貨・多戦略を並列で監視・実行 | 過剰最適化(カーブフィット)の罠 |
| 検証 | 大量データで統計評価が可能 | データ品質・手数料設定の誤差に敏感 |
| 運用 | 24h稼働、睡眠/本業との両立 | サーバ・回線・プラットフォーム依存 |
EAの肝は単純で壊れにくいロジック、想定外時のフェイルセーフ、そして停止の勇気です。
設計の観点:ルール化できる/できない
「ルール化できること」をEAに、「微妙なニュアンス判断」を裁量に分担させると全体の期待値が上がります。以下はルール化の向き不向きの例です。
| 要素 | ルール化の適性 | 備考 |
|---|---|---|
| 価格/時間条件(MAクロス、ブレイク) | 高 | バックテストで妥当性検証可 |
| 経済指標直後の初動 | 中 | スリッページと再現性の課題 |
| 要人発言の含意や文脈 | 低 | 自然言語処理や裁量の領域 |
| セッション時間帯の癖 | 高 | ルール化しやすく効果も安定 |
運用フロー:開発→検証→本番→保守
- 仮説化:なぜ勝てるのかを一文で。市場構造に根差す。
- バックテスト:OOSとウォークフォワードで頑健性を確認。
- ペーパートレード:約定とスリッページの挙動を確認。
- 少額本番:ロットは段階的に。ログを構造化保存。
- 保守:レジーム変化検出、停止基準、再学習/改修のサイクル。
リスク管理:DD・相関・稼働停止基準
裁量・EAどちらにも共通するのが最大ドローダウン(MaxDD)と相関管理です。ポートフォリオとしての DD を意識し、停止・縮小基準を数値で決めておきます。
| 指標 | 監視頻度 | 停止/縮小の目安 |
|---|---|---|
| MaxDD(資産高値比) | 日次 | 許容値の50%でサイズ半減、100%で停止 |
| PF(損益率)/RR | 週次 | 一定期間で基準未達なら停止検討 |
| 相関(戦略間/通貨別) | 週次 | 同時損失リスクが高まる組合せを間引く |
| 実効レバレッジ | 常時 | 閾値超過で新規建て停止 |
ハイブリッド運用の型
- 型A:EA主・裁量従 — EAが24h監視し、裁量は停止/再開とロット調整に専念。
- 型B:裁量主・EA従 — 裁量のシグナル生成をEAが補助(アラート/自動発注)。
- 型C:市場別分担 — USDJPYはEA、XAUUSDは裁量など銘柄で分担。
いずれも役割の重複を避けることが肝心です。
ケーススタディ:USDJPYデイ、XAUUSDスイング
USDJPY(デイトレ×半自動)
- 上位足:4Hでトレンドとチャネル。
- EA:5Mのリテスト/ブレイク条件を機械化、発注は自動。
- 裁量:ニュース前停止、ロット調整、連敗時の一時停止。
XAUUSD(スイング×裁量主)
- 上位足:日足/4Hで広いレンジ端の反応を待つ。
- 裁量:プライスアクション重視。初動は追わず二段目狙い。
- EA:アラートとOCO発注補助のみ。
よくある誤解と落とし穴
- EAなら放置で勝てる:環境が変われば壊れる。停止基準が命。
- 裁量は勘:実は手順と記録の競技。ログがない裁量は迷子になりやすい。
- バックテスト至上主義:OOSや手数料感度を無視すると幻想の勝率になる。
FAQ:実務の細部
Q. まずはどちらから?
A. 裁量で市場感覚を養い、勝ち筋をルール化→EA化が王道。
Q. どの程度までルール化?
A. 「誰がやっても同じ行動になる」まで。曖昧語はコード化前に消す。
Q. 複数EAの同時稼働は?
A. 相関と実効レバを見ながら、段階導入。DD基準を共有。
まとめ
裁量は「環境解釈の柔軟さ」、EAは「再現性と同時性」。二者択一ではなく、ルール化できる部分をEAへ、残りを裁量で補うという分業が合理的です。設計・検証・運用・保守のサイクルを回し続け、勝ち筋を徐々にコード側へ移植していきましょう。
