「強いトレンドだけ狙いたい」を叶えるのがADX。方向はDMIで、勢いはADXで。二刀流でムダ撃ちを減らし、押し目で仕留める型を作ります。
もくじ
この記事の狙いと前提
この記事は、ADX(Average Directional Index)を使って「トレンドの強さ」を測り、順張り(トレンドに従う)トレードの意思決定をシンプルにすることを目的としています。ADXは方向そのものを示すのではなく、方向性の強弱を数値化する指標です。方向の判定はDMI(+DI/-DI)の関係を見て行います。レンジでの無駄打ちを減らし、強い相場でだけ戦うための地図として活用しましょう。
対象は一般的なFX学習者です。数式の厳密さよりも現場の判断に役立つ実務的なコツを重視します。具体例・フローチャート・表を交え、「いつ見送るか」も含めて丁寧に解説します。
キーワード:ADX, DMI, トレンド, 順張り, レンジ回避, ボラティリティ, マルチタイムフレーム
この記事の目的:ADXでトレンド強度を把握し、優位性のあるエントリー条件と撤退基準を設計できるようにする。
ADXとは?DMIとの関係
ADXは、Welles Wilderが提案したDirectional Movement Systemの一部で、DMI(+DIと-DI)から導かれる「トレンド強度」を0〜100のスケールで表現します。一般に25を超えると「トレンドがそれなりに強い」、40を超えると「かなり強い」と解釈されることが多いです。逆に、20未満はレンジ的な動き(方向性が弱い)とみなされやすく、順張りの打率は下がります。
方向の判断自体は、+DI > -DIなら上方向が優勢、+DI < -DIなら下方向が優勢と読み解きます。ADXは「どちらの方向か」ではなく、「その方向性がどれほど力強いか」を測る物差しです。
計算のざっくり仕組みと設定期間
細部の数式は覚える必要はありませんが、仕組みを知ると誤読を減らせます。要点は次の通りです。
- +DM / -DM:当日の高値・安値の差から「上方向の進み」か「下方向の進み」かを抽出。
- TR(True Range):実際の値動きの大きさを表すレンジ。
- +DI / -DI:それぞれをTRで割って正規化した上で平滑化。
- DX→ADX:|+DI − -DI| / (+DI + -DI) をベースに平滑化。これがトレンド強度。
設定期間は14がデフォルトですが、5〜10に短縮すると感度が上がり早期検知、20〜30に伸ばすと騙しは減るが反応は鈍くなります。スキャル・デイでは10〜14、スイングでは14〜20から試すのが実務的です。
数値の読み方(20/25/40の壁)
相場はグラデーションです。とはいえ、現場でスパッと判断するための目安は必要です。以下の基準は多くの検証で使われる実務的なラインです。
| ADXの水準 | 相場の印象 | 戦術の方針 |
|---|---|---|
| < 20 | 方向性が弱い/レンジ | 突破待ち・逆張り検討・取引量を絞る |
| 20〜25 | 芽生え/仕込み段階 | 様子見 or 小さく試し打ち(他の根拠必須) |
| 25〜40 | 実用レベルのトレンド | 順張り優先・押し目/戻りを拾う |
| > 40 | 強いトレンド/加速 | 勢いに便乗。ただし利確は段階的に |
大切なのは、ADXが上昇中か、横ばい/低下か。数値レベルに加え、傾きも意識しましょう。
トレンド判定フローチャート
「今は攻め時か?」を素早く判定するための簡易フローです。
- ADX ≥ 25? → Noなら原則見送り(または小ロット)。
- +DI と -DI の関係 → 上優勢なら買い目線、下優勢なら売り目線。
- 直近の構造(高値・安値の切り上げ/切り下げ)と一致?
- 押し目/戻りのタイミング(移動平均・前回高安・フィボ等)で入る。
- ボラ確認(ATR等)→ ストップ幅とリスクリワードが釣り合うか?
フローを外れて「勢いだけ」で飛びつくと、反転で振り落とされやすくなります。押し待ちの忍耐が結局いちばん効率的です。
エントリー設計(順張りの作法)
具体的なセットアップ例を示します。時間軸は5分〜1時間足を想定。
- 条件A:ADX(14) ≥ 25、かつ上昇傾向。
- 条件B:+DI > -DI(買い)/ +DI < -DI(売り)。
- 条件C:価格が短期MA(例:EMA20)に近づく押し目/戻り。
エントリー:条件A〜Cを満たし、直近の小さなレンジを上抜け(買い)/下抜け(売り)で成行または指値。
損切り:直近スイングの外側+スプレッド/滑りを含めて設定。ATR(14)×1.0〜1.5を目安。
利確:リスクリワード1:1.2以上を最低ラインに、トレーリング(MA割れ/直近安値割れ)で伸ばします。ADXが横ばい→低下に転じたら分割利確。
フィルター&コンフルエンス
ADXだけで完結させないのが実務のコツ。複数の手掛かりが重なるほど、期待値は安定します。
- 移動平均の傾き:MAが上向きなら買い有利、下向きなら売り有利。
- マルチタイム:上位足(例:4H/日足)の方向と一致を確認。
- ボラティリティ:ATRが極端に低い場面は見送り。急拡大の直後も注意。
- イベント:重要指標の前後はスパイクでADXが歪むことあり。
- 価格の地形:前回高安・ラウンドナンバー・ピボットとの位置関係。
誤作動ポイントと回避策
ADXが高い=どこでも勝てる、ではありません。次の落とし穴に注意しましょう。
- ブレイク直後の逆襲:初動の勢いでADXが上がっても、すぐに利確売りで戻すことがある。二段目の押し/戻りを待つ。
- ニュース起因のノイズ:スパイクで一時的に数値が跳ねる。直後5〜15本はサイズを絞る。
- 長期高止まり後の失速:ADX>40が長く続くほど、反転時の反動は大きい。ダイバージェンス(価格は高値更新、ADXは低下)に目配せを。
ケーススタディと検証テーブル
以下は典型的な順張りセットアップのチェック結果例です。実際の相場では時間軸・銘柄で微調整してください。
| 条件 | 状態 | 判断 |
|---|---|---|
| ADX(14) | 28(上昇中) | 実用的なトレンド |
| +DI / -DI | +DI > -DI | 買い優勢 |
| 価格とEMA20 | 押し目で接近 | 押し目買い候補 |
| 直近高値 | 小さなレンジ上抜け | 成行 or 指値でIN |
| 管理 | ATR×1.2でSL | 部分利確+トレーリング |
表の各要素を日々メモし、勝ちパターンの前兆と負けパターンの前兆を可視化すると、裁量の精度がじわりと上がります。
実践チェックリスト
- ADX(14)は25以上か?上昇中か?
- +DI/-DIの優劣は明確か?
- 価格構造(高安の切り上げ/切り下げ)は一致しているか?
- 押し/戻りで入れているか?飛び乗っていないか?
- イベント直後を避け、ボラとSL幅は釣り合っているか?
よくある質問
Q. ADXが低いときは絶対にトレードしないべき?
A. 絶対ではありませんが、順張りの優位性は落ちます。逆張りやブレイク待ち、小ロット検証などに切り替える判断が合理的です。
Q. 数値閾値は固定で良い?
A. 市場や時間帯で変わります。通貨ペアや時間軸ごとに検証し、あなたの環境固有のラインを決めるのが王道です。
Q. 期間は14がベスト?
A. ベストは環境依存。スキャルは短め、スイングは長めが目安。過剰最適化にならないよう注意。
まとめ
ADXは方向ではなく強度を測る指標。25を超え、かつ上昇傾向にある場面で、+DI/-DIの優劣と価格構造を合わせ、押し待ちで入る。この連携がレンジの無駄打ちを減らし、強い相場でだけ戦う「筋のいい順張り」を実現します。数値の絶対値よりも、傾き・文脈・複数根拠。これを合言葉に、毎日の検証ログを育てていきましょう。
用語ミニ辞典
- ADX
- トレンドの強さを0〜100で示す指標。数値が高いほど強い。
- DMI
- +DIと-DIのセット。どちらが優勢かで方向を判断。
- TR/ATR
- 実際の値幅。ATRはTRの平均でボラティリティを測る。
- コンフルエンス
- 複数根拠の重なり。勝率とRRの安定化に寄与。
- ダイバージェンス
- 価格と指標の勢いが逆行する現象。転換の示唆。
運用Tips
- 「ADXが上がる局面」をスクショで収集し、入る前の形をカタログ化。
- ブレイク直後は1回目よりも二回目の押しを好むルールで統一。
- 日足での主要トレンドと乖離しすぎた短期の逆行はサイズを半分に。
- 勝ち負けの前にプロセスの遵守率をKPI化する(例:80%以上)。
