インジケーターは「増やすほど当たる」魔法ではありません。役割分担と重複排除、そして相場構造と整合して初めて、裁量判断のズレを小さくできます。この記事では、トレンド判定・勢い(モメンタム)・ボラティリティ・オシレーター・出来高代替という5つの役割で棚卸しし、フレームワークと実用レシピ、検証手順までを一気通貫で解説します。
もくじ
複数インジの原則:重ねるより“分業”
- 情報の独立性:同じ種類の情報を二重化しない(EMAとSMAの多重は原則NG)。
- 構造と整合:サポレジ・スイング高安・チャートパターンと矛盾しないこと。
- ノイズ耐性:時間帯(東京/欧州/NY)とイベント時のボラ拡大に耐える設定。
- 評価軸は期待値:勝率だけでなく平均損益比(R/R)と一体で評価する。
役割別フレームワーク(5分類)
| 役割 | 代表インジ | 得意 | 弱点 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| トレンド判定 | EMA/SMA、Ichimoku基準線/雲 | 方向性の把握 | レンジでダマシ | 期間を短中長で分散 |
| モメンタム | MACD、RSI、Stoch、ROC | 勢いの変化 | 早すぎ/遅すぎ | 閾値をボラで適応 |
| ボラティリティ | ATR、ボリンジャーバンド | ノイズ幅、拡縮 | 方向情報が弱い | ストップとロットに直結 |
| 反転/過熱 | RSI、ストキャス、CCI | レンジ反転 | トレンドで逆張り化 | トレンド判定とセットで使う |
| 出来高代替 | OBV、VWAP(代替) | 押し目/戻りの妥当性 | FXは出来高が限定的 | セッションまたぎでリセット |
悪い重複/良い重複の見分け方
悪い重複は同じアルゴリズムの重ね掛け(例:SMA50とEMA55の併用)。
良い重複は視点の違いを補完する組み合わせ(例:トレンド×ボラ×モメンタム)。
- OK:EMA200(方向)+ATR×係数(損切り幅)+RSIダイバージェンス(タイミング)
- NG:SMA/EMA/加重MAを3本重ねて“根拠3つ”とみなす
実用レシピ:王道の組み合わせ
レシピ1:トレンドフォロー(M15〜H1)
- 方向:EMA200の上→買い、下→売り優先
- 勢い:MACDヒストグラムのゼロライン・クロスで追随
- ボラ:損切り=ATR(14)×1.4、利確=初期リスクの1.8〜2.2倍
- タイミング:直近スイング外にストップ、押し目/戻り目でエントリー
レシピ2:レンジ反転(M5〜M30)
- 判定:価格がBB±2σの外側へ一時逸脱後、再帰
- 勢い:RSI(14)が30/70付近からの反転
- ボラ:ATR(14)×1.2でストップ、中央線付近で分割利確
レシピ3:ブレイク&プルバック(XAUUSD想定)
- 判定:直近レンジの上限/下限ブレイク
- 勢い:ROC(9)がプラス/マイナス閾値突破
- ボラ:イベント前後は係数を1.8→2.2へ拡張
目安パラメータ表
| 時間軸 | 方向判定 | 勢い | ボラ | 補助 |
|---|---|---|---|---|
| M5 | EMA100/200 | RSI(14) | ATR(14)×1.2〜1.6 | BB(20,2) |
| M15 | EMA200 | MACD(12,26,9) | ATR(14)×1.4〜1.8 | BB(20,2) |
| H1 | SMA200 | ROC(9) | ATR(14)×1.6〜2.0 | VWAP(日次) |
検証・最適化の手順
- 仮組み:役割別に最大3〜4指標まで。まずはR1/R2/R3のテンプレを採用。
- スイープ:各期間と閾値を±20%で一斉スイープし、期待値とDDを記録。
- ロバスト化:最適一点ではなく、広い帯域で安定する設定を選ぶ。
- 前進テスト:直近未使用データ(例:3ヶ月)で再評価。
- 運用更新:週次で係数/閾値とストップ幅を見直す。
シグナルの優先順位とリスク管理
複数シグナルが矛盾したら、①相場構造>②方向判定>③ボラ>④モメンタムの優先順位で判断します。
ロットは口座リスク率×損切り距離から逆算し、ボラ拡大日は自動的に縮小。
FAQ
Q:インジを増やすほど精度は上がりますか?
いいえ。冗長性が増し、判断が遅くなることが多いです。役割分担で最小限に。
Q:期間の初期値は?
M15〜H1ではEMA200・MACD(12,26,9)・ATR(14)・RSI(14)が起点。銘柄で微調整。
Q:順張りと逆張りをどう切り替えますか?
EMA200の上下でベース方向を決め、上なら押し目買い・下なら戻り売りを原則に。
まとめ
複数インジのコツは“足し算”ではなく“分業”。方向×勢い×ボラの三点セットを、相場構造と整合させるだけで判断は一気にクリアになります。ログと検証を回し、広い帯域で安定する設定へ収束させましょう。
