【応用実践】FX記事:ドル円の特性を活かした短期売買戦略

ドル円の特性を活かした短期売買戦略

はじめに

本稿ではドル円(USD/JPY)の“クセ”を踏まえ、短期売買(スキャル〜デイトレ)に絞って実戦的な立ち回り方をまとめます。東京9:55の仲値、ロンドン参入、米金利との連動、オプションバリアやラウンドナンバーなど、ドル円ならではの要素を戦術に落とし込み、『再現性のある一連の手順』として提示します。

ドル円の動き方

ドル円は流動性が高くスプレッドが狭い一方、金利や要人発言に敏感で“速度が出る瞬間”が明確です。相場の駆動要因は(1)米金利※と株式動向、(2)日本の実需フロー(輸出入・仲値)、(3)オプション権利行使価格(バリア)、(4)地政学や要人発言。短期売買では“どの要因が効きやすい時間帯か”を地図化するだけで優位性が上がります。

時間帯のリズム

時間帯ごとの“雰囲気”は大切です。東京序盤は実需で方向が出やすく、昼はレンジに戻りやすい。ロンドン参入でブレイクが走り、NYは米指標と金利で再加速。このリズムに合わせて、型(ブレイク/押し戻り/均衡回帰)を切り替えます。

チャート設計

チャートは上位足(4H/1H)で大きな流れを確認し、短期のタイミングは5分/1分で最適化します。移動平均(5EMA/20EMA/75SMA/200SMA)、ボリンジャーバンド、ピボット、前日高安・仲値、オプションバリア(00/50のラウンド含む)をレイヤー化。根拠の“重なり”を可視化します。

セットアップ3選

代表的なセットアップを三つに整理します。①東京仲値(9:55JST)型:序盤のフローに便乗し、9:50〜10:05で完結。②ロンドンブレイク型:15:00〜17:00JSTの波。重要高安の明確な抜けを再テストで。③NY指標追随型:米指標や金利で方向が出た二次波を、押し戻りで。どの型でも、損切り位置→ロットの順で逆算します。

リスク管理

リスク管理の要諦は“速度”に合わせたサイズ調整です。ATR連動のストップ、直近スイング外側、スプレッド×2の余裕、連敗上限、日次損失上限の四本柱を標準装備に。『勝ちを伸ばす』より『負けを一定に保つ』が先です。

執行テクニック

執行は“成行の速さ・指値の精度・逆指値の安全”を使い分け。初動は成行+許容スリッページ小さめ、均衡回帰狙いは指値、ブレイクは逆指値(Stop)で価格に仕事をさせます。部分利確+トレールで利益を保護。

水平線とバリア

ラインの扱いはシンプルに。前日高安、当日高安、9:55仲値付近、ラウンド(00/50)、前回転換点を“水平線”で管理。『水平×移動平均の合流点』は反応が出やすい鉄板ゾーンです。

心理とルール

心理面では“取り返したい”の感情を事前ルールで封じます。トレード前チェックリスト、勝ち/負けの次の一手テンプレ、呼吸リセットの導入で、期待値から逸脱しない“退屈なプロセス”を守り抜くこと。

参考テーブル

時間帯(JST) 特徴 狙い所 注意点
8:50–10:10(仲値) 実需で方向が出やすい 押し戻りで短期回転 9:55後の反転・往復ビンタ
15:00–17:00(ロンドン) ブレイクが走りやすい 再テストでエントリー フェイクブレイク
21:30–23:30(NY) 米指標・金利で加速 二次波の押し戻り ボラと滑り拡大
昼・深夜帯 レンジ化しやすい 均衡回帰の小幅抜き 板が薄く急変あり
チェック項目 基準/ルール例
上位足の傾き 1H/4Hで5EMA>20EMAなら買い優先。逆なら売り優先。
ボラ ATRが平常比1.2倍以上でサイズを0.8倍に調整。
レベル 前日高安/当日高安/00・50に近いか。
執行 成行/指値/逆指値のどれで入るか事前決定。
リスク 口座の0.5–1.0%/回。連敗3回で日次終了。

プレイブック例

【ドル円ショートスイング・プレイブック(例)】
Context: 1Hで20EMA<75SMA、直近高値に下向きMAが重なる。
Trigger: 5分足で戻り売り。直近戻り高値に逆指値売り、約定後に半分はRR≥1.2で利確。
Risk: 損切りは戻り高値の外側+スプレッド×2。1回の損失は口座0.8%。
Exit: 後半は直近安値割れでトレール。NYで指標前なら手仕舞い。

FAQ

【FAQ】 Q. 仲値は毎日同じように動きますか? A. 需要とニュース次第で変化します。『走った後は戻りやすい』などの傾向はありますが、毎回狙うより型を守り、無理に参加しない日を作る方が統計的に安定します。 Q. ラウンドナンバーはなぜ機能する? A. 指値・逆指値の集積とオプションの行使価格が重なりやすいからです。止まりやすく、抜けると走りやすい“節”になります。

まとめ

ドル円短期売買の核心は『時間帯の地図×水平線×サイズ管理』。勢いに乗る場面と見送る場面を分け、損失を一定に保ちながら、同じ型を飽きるほど繰り返す――それがプロセス勝ちの最短ルートです。


ケーススタディ:東京仲値。8:55時点で上位足は上昇、5分足は5EMA>20EMA。寄りのプルバックで前日高値付近まで押し、9:45過ぎから再上昇。9:52の押し目で成行エントリー、9:55通過で半分利確、残りは10:05の失速で手仕舞い。失速の兆候は5分足のヒゲ増加と出来高鈍化、20EMA割れで撤退。