「VPS(Virtual Private Server)」は、24時間稼働の自分専用ミニ・サーバーです。FXの自動売買(EA, Expert Advisor)を安定運用するうえで、PCの電源・回線・再起動の都合に左右されないのが最大の魅力。この記事では、VPSの仕組みから、EAに向いたスペックの選び方、コスト比較、実践セットアップ、そしてありがちなトラブルの回避法まで、現場で使う人の目線で丁寧に解説します。
先に結論:本気でEAを回すならVPSは“ほぼ必須級”。ただし、裁量トレード中心・週数回だけEAを動かすなら、ローカルPC+電源管理+無停電対策でも運用可能です。選択の軸は、可用性(止まらない)・遅延(速い)・コスト(割に合う)の三つ。
もくじ
VPSとは?クラウドと何が違う?
VPSは、1台の物理サーバー上に複数の仮想サーバーを立てて、1契約=1台の仮想マシンを占有できるサービスです。共用サーバーより自由度が高く、専用サーバーより安価。FX用途では、Windows Server + リモートデスクトップの構成が主流です。
VPS / クラウド / 専用サーバーの違い
| 種類 | 特徴 | 初期費用 | 月額 | 柔軟性 | 向き |
|---|---|---|---|---|---|
| VPS | 仮想サーバーを占有。コスパ良好 | 安 | 中 | 中 | EA運用の定番 |
| クラウド | 従量課金/スケール自在。設計の自由度が高い | 無 | 変動 | 高 | 大規模/多EA/冗長化 |
| 専用サーバー | 物理を占有。最高の安定性 | 中〜高 | 高 | 中 | 機関投資家/超低遅延 |
EAでは、“止まらない・勝手に再起動されない”ことが最優先。VPSはこの要件をコスパ良く満たしやすいのが人気の理由です。
EA運用でVPSが推される理由
- 24時間稼働:自宅PCのスリープ・更新再起動・ブレーカー落ちに左右されない。
- 回線の安定:データセンターのバックボーンでパケットロスが少ない。
- 遅延の短縮:ブローカーのサーバーに地理的に近い拠点を選べば、約定遅延を短縮できる。
- 運用の分離:私用PCと切り離すことで、通知/ゲーム/動画がEAに干渉しない。
逆に、VPSが不要なケースは「検証のみ」「平日日中だけ裁量」「スマホで見守り中心」。可用性コストと期待利益の釣り合いで決めましょう。
スペックの選び方(CPU/メモリ/ストレージ/回線)
MT4/MT5のEA運用では、EA本数 × タイムフレーム × 同時通貨数で負荷が増えます。目安は以下:
| 運用規模 | CPU | メモリ | ストレージ | 回線 |
|---|---|---|---|---|
| ライト(MT5×1, EA 1-3) | 2 vCPU | 4 GB | 40–60 GB SSD | 共有1Gbps級 |
| ミドル(MT5×2-3, EA 5-10) | 3–4 vCPU | 8 GB | 80–120 GB SSD | 1Gbps以上 |
| ヘビー(検証+本番/多EA) | 6–8 vCPU | 16 GB | 160 GB+ NVMe | 専有/保証帯域 |
コア数より安定性:EAはシングルスレッド依存が強いものも多く、クロックとI/Oが体感差を生みます。ストレージはNVMe推奨。メモリ不足は即フリーズ要因。
遅延(レイテンシ)と約定品質:どこまで気にする?
遅延は、端末→ブローカー仲値サーバーまでの往復時間(RTT)。スキャルピングやニュース系EAでは影響が顕著です。
- <10 ms:理想域(同一DC/近傍)
- 10–30 ms:実運用上十分
- 30–80 ms:許容だが高速系EAは要検討
- >80 ms:スリッページ増加を覚悟
地理選定のコツ:ブローカーがLDN/NY/TYO/SGなどどこにサーバーを置くかを確認し、同一リージョンのVPSを選ぶと体感が激変します。
コスト比較:自宅PC vs VPS
月額と可用性のトレードオフ。下表は概算です。
| 項目 | 自宅PC(省電力機) | VPS(2vCPU/4GB級) |
|---|---|---|
| 月額 | 電気代1,200–2,000円 | 1,500–3,000円 |
| 初期 | ハード購入4–8万円 | 初期ほぼ0円 |
| 可用性 | 停電/回線落ちの影響大 | 高可用インフラ |
| 遅延 | 居住地依存 | 拠点選択で最適化可 |
| 拡張 | 買い替えが重い | プラン変更が容易 |
損益分岐は、VPS費用を月の期待利益で割り、手数料・スリッページ軽減効果も加味して判断します。
実践セットアップ:初回〜運用の手順
- リージョン選択:ブローカーDC最寄り(例:LDN、NY、TYO、SG)。
- OS選択:Windows Server 2019/2022推奨。リモートデスクトップ(RDP)で接続。
- 初期強化:自動更新の時間帯調整、不要サービス停止、時刻同期、
電源設定=常時オン。 - MT5導入:データフォルダは
SSD/NVMe上。履歴データの肥大化に注意。 - EA配置:
MQL5/Expertsへ。パラメータは.setでバージョン管理。 - 監視仕組み:VPS起動監視、MT5プロセス監視、ログ監視(後述)。
RDP小ワザ:接続品質を「最適化」にし、クリップボードとドライブ転送だけ有効にすると軽快です。
24時間安定運用のコツ(監視・自動復旧)
- MT5が落ちたら自動再起動:タスクスケジューラで
On event起動、もしくは監視ツール。 - ログ循環:
MQL5\LogsやAgent\logsの定期削除でI/O劣化を防止。 - バックアップ:
profiles/とMQL5/を週1アーカイブ。 - 時刻同期:NTP誤差は約定品質に影響。
w32tm /resyncを定期実行。 - 冗長化:重要EAは別VPSへミラーし、ロットを分散。
ありがちトラブルと対処
① 突然の遅延悪化:近隣障害やノード混雑。別ゾーンへ移設や再割当で改善することがあります。
② MT5が固まる:履歴肥大/EA暴走/インジ過多。不要チャート閉鎖・インジ整理・メモリ増設で対処。
③ RDPが切れる:VPS側ファイアウォール/回線品質/過負荷。Network Level Authentication設定と回線確認。
④ 週末メンテで止まる:自動更新を日曜昼など相場非稼働時間に調整。
よくある質問(FAQ)
Q. スマホだけでEAは動かせる?
— いいえ。EA実行はWindows/MT5が必要。スマホは監視用途が現実的。
Q. 家のNURO/光回線なら十分?
— 可用性と遅延でVPSに及ばない場合が多い。短期EAほどVPS優位。
Q. どのくらいのプランで始める?
— まずは2vCPU/4GBから。足りなければ段階的に増強。
まとめ
EAは「止めない・遅らせない・壊さない」が勝ち筋。VPSはその三拍子を、現実的なコストで満たす頼れる土台です。最寄りリージョンと十分なメモリ/NVMe、そして監視と自動復旧を押さえれば、あなたのEAは“動き続ける資産”に育ちます。
