もくじ
EAの基本:何を自動化するのか
EA(Expert Advisor)は、ルール化できる反復作業を機械に任せる仕組みです。エントリー、決済、トレーリング、分割利確、時間帯フィルター、ニュース回避など、人がやるとムラが出やすい手順を安定的に再現します。要は、仕様書に落とせることだけが動くということです。
重要なのは「期待値の源泉」を言語化すること。例:トレンド方向にリテストが完了した瞬間は、参加者の心理が一致しやすく滑りが少ない。この仮説に根拠(統計・市場構造)があるほど、EAは長生きします。
代表的なEAタイプと得意/不得意
| タイプ | 概要 | 得意 | 不得意 |
|---|---|---|---|
| トレンド追随 | MA/ブレイクで順張り | トレンド持続局面 | レンジ・フェイク多発局面 |
| レンジ逆張り | オシレーターで反転狙い | 低ボラの往復 | トレンド初動・拡散局面 |
| ブレイクアウト | 高値/安値の抜けを捕捉 | 指標後の拡散・ロンドン初動 | ダマシとスリッページ |
| 裁量補助 | アラート/自動発注/OCO | 裁量のルール化部分 | 文脈判断そのもの |
万能は存在しません。局面(regime)に合うEAを選び、合わない時は休ませるのが鉄則です。
バックテストを読む:罠と見抜き方
美しい右肩上がりの曲線には罠が潜みます。チェックするのは以下。
| 項目 | 見るポイント | 赤信号 |
|---|---|---|
| 期間とサンプル | 長期×多局面(トレンド/レンジ/危機) | 短期限定・一発屋 |
| 手数料/スリッページ | 現実的な設定か | 極端に軽い前提 |
| OOS(検証外データ) | 別期間で再現性を確認 | OOSなし |
| パラメータ安定性 | 近傍でも性能が維持される | 一点だけ突出(カーブフィット) |
| ドローダウン | 深さだけでなく長さも確認 | 長期の塩漬けDD |
さらに、月次損益の分散や勝ち/負けの連続分布も要確認。メンタル耐性と口座設計に影響します。
フォワードテストと小額本番
バックテストが良くても、本番で同じ結果になるとは限りません。そこで段階を踏みます。
- フォワード(デモ/小ロット):約定特性とスリッページを観察。
- ログ設計:すべての取引に「理由・条件・環境」を紐づける。
- 小額本番:実コストを把握し、想定と乖離がないか検証。
この過程で停止基準と縮小ルールを先に決め、ボタン一つで実行できるよう整備します。
選び方フレーム:指標・相場観・環境
EA選定は「どの局面で働く設計か」の確認から。
| 観点 | 問い | 具体例 |
|---|---|---|
| 指標(仮説) | なぜ勝てる?市場構造のどこに依存? | 開場直後のボラ拡張 |
| 相場観(局面) | トレンド/レンジ/危機のどれに強い? | トレンド追随型 |
| 環境(実装) | 必要な約定力/回線/サーバは? | VPS/低レイテンシ必須 |
最終的には、生活リズム・証拠金・心理耐性に合うかどうか。人に合っても、あなたに合うとは限りません。
運用設計:停止基準とサイズ調整
EAは止める力が成果を左右します。具体的な数値ルールを持ち、機械的に実行します。
| 項目 | 例 | 備考 |
|---|---|---|
| 停止基準(単体) | PF<0.9がN週継続 / MaxDD許容超え | 停止→原因分析→再開条件 |
| 縮小基準 | 連敗M回でロット半減 | 回復条件を数値化 |
| ニュース回避 | 高影響指標の前後X分は停止 | 自動スケジューラで管理 |
| 時間帯制御 | ロンドン/NYのみ稼働 | アジア時間は休止 等 |
ポートフォリオ:複数EAの組み合わせ
同じ勝ち筋のEAをいくつも足すと、同時ドローダウンが起こります。性格の異なるEA(トレンド×レンジ、短期×中期、USD系×金属系)を組み合わせ、通貨別・戦略別の相関を管理します。
| 組み合わせ | 狙い | 注意点 |
|---|---|---|
| トレンド×レンジ | レジーム分散 | 両方同時低調期もある |
| 短期×中期 | 時間分散 | 実効レバの合算に注意 |
| USD系×XAUUSD | 通貨/商品分散 | イベントの被り |
ケーススタディ:トレンド追随EAと逆張りEA
トレンド追随EA(USDJPY/ロンドン〜NY)
- ロジック:1H上昇時の15M押し目リテストで買い。
- 強み:トレンド持続局面でRRが伸びる。
- 弱み:レンジ化でダマシ多発。ニュース直前は休止。
逆張りEA(XAUUSD/アジア〜ロンドン前)
- ロジック:日足レンジ内の1H乖離をRSIで反転。
- 強み:低ボラ時間の往復で収益。
- 弱み:トレンド初動に弱い。ブレイク検知で停止。
両者の同時稼働は、レジーム分散が期待できる一方、実効レバレッジとUSDエクスポージャの合計を常時監視します。
よくある誤解と落とし穴
- 右肩上がりならOK:コスト前提が甘い可能性。OOSと感度分析必須。
- 全部自動が最強:停止基準とメンテがないEAは短命。
- 口コミ評価=将来の成績:サンプリングバイアスに注意。自分の口座条件で検証。
導入チェックリスト&テンプレ
- 勝ち筋の仮説は一文で説明できる?
- バックテストはOOS・感度分析・現実的なコスト設定?
- 停止基準・縮小ルール・再開条件は数値で定義済み?
- 相関と実効レバの上限は?(通貨別・戦略別)
- ログ設計は?(取引理由・環境・結果の紐付け)
<導入テンプレ> Hypothesis: Trend-following works after a clean retest during London. Backtest: 2015-2025, realistic fees/slippage, OOS 20%. Risk: MaxDD 12%, stop rule PF<0.9 for 4 weeks. Ops: Pause around Tier-1 events; run only London/NY. Portfolio: Pair with mean-reversion EA on XAUUSD. </導入テンプレ>
まとめ
EAは魔法ではなく設計・検証・運用の積み重ねです。シンプルなロジックを厳密に検証し、止める・縮小する規律を徹底する。あなたの生活と心理に合うEAだけを選び、ポートフォリオ全体でリスクをコントロールしましょう。
